奏再構(KRPJ)というものがありまして。

以前からTwitterの言語学界隈、特に2018年ごろ?に盛んだった日琉祖語界隈のアマチュア再構に興味があったのでそれに手をつけてみます。

アマチュアとは言っても、前衛的な荒さがあるだけで水準はアカデミアの通説の水準よりもかなり進んでいるような印象があります。それでいて高校生とかが混じって大量の文献、知識に通じているんだから世の中の上澄みには敵わんなぁという気持ちになります。

さて、この記事では現在は国立国語研究所で博士課程をやっている常藍守 奏(尹 熙洙, Twitter:@cppig1995)氏の日琉祖語の再建案を扱おうと思います。

奏再構についてはTokaimori(2020)で当時の概要をざっくりまとめてくれているのでそれを元に、最近発表された尹(2025)で補いつつ見ていこうと思います。Tokaimori(2020)以外からの引用のみ出典を示します。

まず、いくつか特徴について考えてみます。(僕自身が言語学界隈の方々の再建案について全く知らないので比較はできないのですが)

尹(2025)では「(*NC 以外の)子音連結は本来(再建できる最も早い段階から)語根に含まれていたのではなく,子音で終わる形態素と子音から始まる形態素の連結によって,または子音間における母音の脱落によって生じたもの」という枠組みであることを述べています。

また、「日琉祖語」を「主として日本語の内的再建によって得られた祖語で,必要に応じて琉球諸語データを参照して調整を行ったもの」として再建していることを述べています。

前者について特に奏再構では、通説で説明できない対応について二重母音や子音連続を設定し、かつそれらから先日琉祖語とでもいう段階に母音間の子音(*r)や子音間の母音や形態素境界(ひいては語幹末・語末の子音)を再建しています。

後者については、形容詞のク活用とシク活用内による内的再建が日琉祖語の子音連続の存在の根拠となっています。また、上代中央日本語(〜日琉祖語)のAとBが同源とする語源説によっている部分が結構多いです。根拠となっているそれぞれの語源説にその人がどれだけ慎重であるかによっても奏再構の許容度は変わってきそうです。

今後の課題としては母音脱落規則の解明や琉球諸語との比較による検証を挙げています。

一応、これらが特徴ということになるでしょうか。

ということで見ていきます。なお、上代語のy[j]の表記は個人的に混乱するのでjに変えています。自分が整理するためにまとめた補助資料って感じなのでこれ単体の可読性は皆無に等しいです。

音素目録

以下の音素目録が示される。

子音 /m/, /mʲ/, /n/, /p/, /pʲ/, /t/, /k/, /kʲ/, /s/, /w/, /r/, /j/
母音 /i/, /e/, /a/, /ə/, /o/, /u/

  • 濁音 b [ᵐb], d [ⁿd], z [ⁿ(d)z], g [ᵑg]は/np/, /nt/, /ns/, /nk/の子音連結とみなす。
  • 上代特殊仮名遣い
    • 甲類
      • Cî /Cʲi/
      • Cê /Cʲe/
      • Cô /Co/
    • 乙類
      • Cï /Ci/
      • Cë /Ce/
      • Cö /Cə/
    • woは少なくとも語頭で/o/

woの言及はよくわかってないです。長母音も再建してると思う。 Yun(2017)ではFrellesvig and Whitman(2004)の*ɨ を採用していますが、Tokaimori(2020)や尹(2025)では採用してないっぽいので置いておきます。

音変化

Pellard(2024)で示されているような現在通説となっているものは省きます。章立てはざっくりです。

子音だけが介在する音変化

PJ *rn > WOJ r, EOJ n, PR *n

  • 根拠:比較。
  • EMJ kurabe- :: PR *kunabe- 「比べる」 < PJ *kur-namp-ar- = *kur- + *namp-ar- 「繰る+並(な)ぶ」

語末 *r, *s > WOJ Ø

  • 根拠:形容詞活用の整理と語幹名詞、二段活用の整理とsecondary stem名詞の設定
  • 「赤」*akas
  • 「春」*parus cf. 「春雨」WOJ parusamë
  • 「村」*murar cf.「群れる」WOJ mure < PJ *mur-ar-
    • 連用形 *mur-ai̯s < *mur-ar-is
  • 「霰」*ar-ar-nai̯s cf. WOJ 「荒れる」are-
    • 指小辞 *-nai̯s < *-nari(s) cf. WOJ 「岩根」ipa-ne、『三国志』の彌彌と 彌彌那利

n~d

  • *mù-jək- 「身-避く」> *mjək- > nok-~dok-「のく」「どく」

これに関しては音変化を想定しているわけではない気がするが一応書くだけ。

子音と母音が介在する音変化

以下は尹 (2025)(および尹 (2024))で説明されている「子音間の母音脱落」。

*C₁VC₂ > *C₁C₂ > WOJ C₂ (C₁に鼻音の要素がある場合は濁音 ⁿC₂)

  • 根拠:形容詞活用の整理、上代語の(主に形態素境界における)子音間の狭母音脱落の拡張
  • 上代語の子音間の狭母音脱落には音環境が似ているものがあり、本来規則的だったのではないか。
    • nurite > nute「鐸」(Erickson 2004)
      • pumî「文」+ te「手」> puⁿde「筆」
    • mura「村」+ nusi「主」> muraⁿzi「連(姓)」
      • tôⁿzi「主婦」
  • 形容詞活用の項参照。
  • 母音脱落の条件は完全にはわかっていないが位置の傾向としてはある?尹 (2024)
    • 短い語 (1~2音節) では起こらない。
    • 主に4音節以上 (活用語の場合は、連体形が4音節以上)
      • 脱落する母音は奇数音節目の場合が多い
      • 形容詞は第3音節の位置(形容詞の項参照)、形容詞以外は第1音節
    • 条件としては尹 (2025)では強勢音節の直後の非強勢音節の母音が脱落するという規則を考えている
    • 通常4音節以上の長い語は第一音節の母音が規則的に脱落する
      • ただし固有語を前部要素とする複合語や語頭と語中に*NCを持つ場合はその限りではない。
    • 隣接する2 つの音節の母音が脱落しない限り,一つの語の中で複数の母音が脱落することには,特に制限がない。
    • 母音脱落によって高起式(A)から低起式(B)に変わっているように見える語が存在する
      • CVp- の語幹を持つ動詞で、意味的に *CVC-àp- に由来する可能性があるもの。
        •  3音節語では、高起式 (A) の語の第2音節の母音が脱落する
      • CVs(e)- の語幹を持つ動詞で、*CVC-às(ai ̯ )- に由来すると思われるもの
        • 脱落するものは高起式 (A) が多い (高起式の 4/14 > 低起式の 1/21)
      • 式は先日琉祖語に存在した強勢に由来するか
        • 3音節語で、第3音節に強勢を持つ語は、(後の) 高起式 (A) 相当、そうでない語は、(後の) 低起式 (B) 相当
        • 短い (4音節未満の?) 語では、第1音節の母音は脱落しない
        • 長い (4音節以上の?) 語では、(二次強勢のせいで?) 強勢の配置が乱れて、偶数音節目が強調される (iambic) パターンに収束、奇数音節目の母音脱落が発生
        • 本来強勢の位置が違っても、同根と認識されれば類推によって同じ式になる
          • 反復の *-àp- と使役の *-às(ai ̯ )- の違い
          • 強勢位置の再建が難しい理由
  • 「昔」WOJ mukasi < *mukap-is-i cf. 「昔」宮古 /m̩kʲaːn̩/ < PR *mukaw-i=ni)
  • 「如し」ᵑgötö < *nkətəs- < *nà-kətəs-「NEG-別である」
    • 「〜ず(否定.終始)」-ⁿzu < *ns-u < *nà-s-u 「NEG-do-終止形語尾」
    • 「〜ぬ(否定.連体)」 -n- < *nn- < *nà-n-
  • *mù-jək- 「身-避く」> *mjək- > nok-~dok-「のく」「どく」
  • 「巷」*mìti-n-mata (道-gen-股)> *mtinmata >timata
  •  「食べる」kup- B < *kur-àp-「食べる-iter」(cf. kurap- A)

母音脱落の条件の言及も入れたら凄まじい羅列になってしまった。

*Vri > PJ *Vi̯

  • 根拠:同源と考えられる名詞と動詞の対応
    • 「音」*nai̯ < *nar-i cf.「鳴る」*nar-
    • 「荷」*nəi̯ < *nər-i cf.「乗る」*nər-
  • 同様の名詞(apophonic nouns)には PJ *…i̯ < *…r-iを再建する。
    • ホイットマン(2016)の母音交替を示す名詞に対して、*kamur「神」 kamu+kaze 「神風」 *kamur# > *kamuj# > kami甲という再建の証拠がこの語くらいで限定的であるからであるという。(Yun 2017)

ただしホイットマン(2016)では「語尾*-i説」は一定の意味論的・統語論的機能が見当たらないという指摘もされている。

*Vrj > PJ *Vi̯

  • 根拠:二段動詞の活用の整合性。*Vri > PJ *Vi̯の項も参照。
  • 「起く(命令形)」*ək-ər-jə > PJ *ək-əi̯jə > WOJ ökïjö

音節副音の記号は必要なのかな。

*rVi̯ > WOJ ri

  • 根拠:*Vri > PJ *Vi̯からか?
  • 上代中央語のすべてのriは*rVi̯か平準化した五段動詞である。

以下、尹 (2024)。

PJ 語頭 CjV > *Cʲi ̯V
*mʲ > WOJ n, PR *m, J dialectal m
(
mjVː > *mʲVː)

  • 根拠:比較
  • 「猫」EMJ ne-ko < *mja <PJ *maja (PR *maja, *ne-ka, アイヌ語借用語 meko)
    • 指小辞のついた形式は長くなって音が脱落した
  • 「虹」EMJ nizi, EOJ nôzi, PR nozi, J dialectal miyozi < PJ *mjoːNsui̯~mijoːNsui̯
    • 尹 (2025)
    • 「見える」WOJ mîye- < *mij-ərと関係があるかもしれない
  • 尹 (2024)
    • *CjV > *Cʲi ̯V
    • *mʲ > *n

「虹」に関してはもともとは*mjə…で再建していたが、多分WOJ ni…を生じないとして尹 (2025)では*mjo…になっている。

*C-jə > WOJ Cê /Cʲ-e/
*jə > WOJ je, PR *jo
*jəi̯ >( pre-WOJ *je >) WOJ je
(jの後でpre-WOJのMVRが阻止されてCïにならない。)

  • 根拠:二段動詞と五段動詞の命令形の整合性。比較。
  • 五段動詞命令形
  • 「枝」jeda < *jəːNta < *jər-Nta (PR *joda)
    • je < *jəi̯ < *jər-i

母音交替を示さない「枝」jeに対して jəC-iにrを再建してる根拠はよくわからない。

*jwa > jua

  • 根拠:「弱む」と「病む」の同源性?
  • 「弱む」jòwam- > jwam- > 「病む」juam- > WOJ jam-

母音だけが介在する音変化

以下、上昇三重母音(rising triphthong)の崩壊。尹 (2025:196-197)。

上昇三重母音 *V₁V₂V₃(V₁ と V₂ は狭母音) > *V₁V₃

  • 根拠:「猫」「叫ぶ」
  • 「猫」*majua >  *mjua > *niua > *nia > ne(-ko) (PR *majo)
  • 「叫ぶ」*sak-juaNp-(?-呼ぶ) > *sakiuaNp- > *sakiaNp- > sakêᵐb-

崩壊ってことは規則的じゃないんでしょうか。

以下、曲折三重母音(rising–falling triphthong)の崩壊。尹 (2025:197-198)。

屈折三重母音 *V₁V₂V₃(V₁ と V₃ は狭母音) > *V₂V₃

  • 根拠:感情を表すシク活用形容詞と上二段活用動詞の対応における「恨めしい」
  • 感情を表すシク活用形容詞と上二段活用動詞の対応関係←?
    • a. kôposi-, kôpï- < *k[o]pos-, *k[o]poi-「恋しい(恋しく思う)」
    • b. saᵐbusi-, saᵐbï- < *saNp[u]s-, *saNp[u]i-「寂しい(寂しく思う)」
  • 一方で,uramêsi-「恨めしい」とurami- 「恨む」< *uramï- は対応しないように見える。←?
    • しかし,母音脱落仮説では,*ura-mjas-, *ura-mjai- < *ura-mòjas-, *ura-mòjai- を再建することによって,この不一致を解決することができる。
    • a. *ura-mòjas- > *ura-mjas- > *uramias- > uramêsi-
    • b. *ura-mòjai- > *ura-mjai- > *uramiai- > *uramï-
  • 「過ぎる」suN-kòjVi-(suN-越える) > *suNkjVi- > *suNkiVi > suᵑgï-
    • 「過ごす」*suN-kos- (*suN-越す)> suᵑgus-

ちょっとuramêsi-「恨めしい」とurami- 「恨む」が通常ではない対応を示すというのが何度見ても読み取れないのでとりあえずほぼ写経。

以下、苺延長(Strawberry lengthening)。

*VCNC > PJ *VːNC (代償延長)
*əː > WOJ (*əi̯ > *ë >) ï, PR *o
おそらく音声的には*[əɨ̯] > *[əi̯]で上昇二重母音(rising dipthongs)として再分析された。

  • 根拠:比較。以下の他にも「虹」「逃げる」がWOJ i~e :: PR *oの対応を示す。
  • この場合の*NCは「強い濁音」(尹 2024:17)。
    • 苺延長を生じるには…C-NC、あるいは…C-n(GEN)-C…という複合語ないといけない。
  • 「枝」jeda < *jəːNta < *jər-Nta (PR *joda)
    • je < *jəi̯ < *jər-i
  • 「苺」 itibî(-kô) < *itəːNtpi < *itəC-Npi (PR *itobi)

əː > WOJ (*əi̯ > *ë >) ïの下りは尹 (2024:17)と合わせた解釈なので間違っているかもしれない。

以下は苺延長の続きです。

*iː, *uː > WOJ î, u, PR *e(第一音節、それ以外でØ)?  *oː, *eː> WOJ ô, ê(ë?) (pre-WOJのMVRを回避), PR *u, ?

PJ *iː, *eː, *oː, *uː > pre-PR *eː, *eː, *oː, *o > PR *e~*i, *o~*u
then split into PR close vowel (in unstressed syllable) or mid vowel (in stressed syllable).

  • 根拠:比較。苺長化の項を参照。
  • 「水(みず)」mîdu < PJ *miːNtu < *mir-Ntu (PR *meⁿdzu)
    • 「水(みな)」PJ *mina- < *mir-n-ar- (首里 /nnatu/ (Yun 2017))
    • 「涙」WOJ namîta~namîda < PJ *mna- + *miː-Nta < 「目な水」*ma-na-miː-Nta (首里 /nada/ (Yun 2017))
  • 「遊ぶ」WOJ asôb- :: PR *asub- < PJ *asoːNp-

「水(みず)」「水(みな)」は多分琉球祖語で*medu, *mina-になっているということなんだと思います。 *eː が甲乙のどちらを生じるのかはよくわからず*oːと合わせたが、pre-WOJでPJ *i̯ə と合流するらしいのでëを生じるというのが正しい理解かもしれない。

以下、二重母音。

PJ *i̯ə > pre-WOJ *eː > WOJ ë(?)
(pre-WOJのMVRを回避)

PJ *Cəi̯ > pre-WOJ *e > WOJ î

  • 根拠:内的再建(Erickson 2004)
  • pre-WOJの時点で元々のeːやeと合流する
  • 「空蝉」OJ utusemî ~ utsusömî < *utusêmî < AJ *utusi+omî (現実+人)
  • 「舎人」OJ töneri < *tönëri < AJ tönö + iri (殿+入り)

自分が知らなかっただけで普通に通説なのかもしれない。Erickson(2004)ではəi̯ の一部が先にui̯ に合流して、そのあと残りにai̯が合流するというのを考えているけど条件は何なんだろう。

以下、続き。

PJ  *i̯a > pre-WOJ *ɛː >  *ɛ > WOJ /e/
PJ *ai̯ > pre-WOJ *ɛ > *e > WOJ /e/
PJ  *u̯a > pre-WOJ *ɔː > *ɔ > WOJ /o/, EOJ(遠江、下野) u
PJ *au̯ > pre-WOJ *ɔ > *o > WOJ /o/

  • 根拠:上に同じ
  • 「暇」*ituama >EMJ itoma, PR *itoma EOJ(遠江) iⁿduma
    • 上代駿河方言に関してKupchik(2011: 116) では「家」WOJ ipê :: 駿河 ipiの対応に対して、他の東国地方のipaが在証されることなどから二次的なe > iではなく、*iaの二重母音を再建していることを踏まえている。

上三つはê, ë, ôに対応するか?

以下、上と合わせて。

*ua > a / {r, j}_

  • 根拠
  • 「原」*parua > WOJ para, PR *paro
  • 「病む」*juam-
    • 「病気」WOJ jamapî, EOJ(下野) jumapî
      • 「悩む」WOJ najam-, EOJ najum-

第1音節 *io > i sometimes *jo(> ju MVR)
第2音節 *io

  • 根拠:i~juの二重語、50
  • 「行く」ik-~juk- < PJ *i̯ok- < *i-ok-
    • iはVovin(2009: 561-562)上代語で子音で始まる動詞の前だけに見られる方向-場所の焦点接頭辞。
  • 「50」WOJ i < i-o cf. 「30」mis-o「80」 jas-o 「10」*pìtə-o( >  ptə-o)
    • 尹 (2025:196-197)
  • 「歩く」*ar-i̯ok-(ar-行く) > aruk-
  • 「力」*tùjokara > *tjokara > *tiokara > tikara~-ⁿdukara((み)ずから) HLL 
    • tuyo-「強い」
  • 「斑鳩」WOJ ikaruga~igaruga < *i̯oNkar-i̯oNkar

崩壊(decay)という言葉が使われているけど、これは一般にある説明なんだろうか?

*əo > WOJ öwo

  • 根拠:「10」、 *io > iの項も参照。
  • 「10」pìtə-o >  ptə-o > WOJ töwo

*{o,u} i̯ > WOJ i, PR *i, EOJ u

  • 根拠:比較
  •  「新しい」WOJ nipî <  PJ *mjip{o, u}i̯s- (PR mi[w]i, EOJ nipu)

pre-WOJ *iCi > /iCʲi/

  • 根拠:比較
  • 「新しい」WOJ nipî <  PJ *mjip{o, u}i̯s- (PR mi[w]i, EOJ nipu)

*ui̯ > u~i

  • 根拠:名詞化接辞*-Nsuと「虹」、助数詞「つ」
  • 「傷」 PJ *kiːNsu < *kir-Nsu
    • 「虹」EMJ nizi, EOJ nôzi, PR *nozi, J dialectal miyozi < PJ *mjoːNsui̯~*mijoːNsui̯ < *mij-ər-Nsui
      • 尹 (2025)
  •  「つ」*-tui̯ > -ti, -tu cf. misô-ti, puta-tu
  • それぞれ*Vri > PJ *Vi̯より*-Nsur, *-tur,

i ̯i > WOJ i, PR *i

  • 根拠:上に同じ。他にも「川蜷」など。*CjV > *Cʲi ̯V の項参照。
  • 「庭」WOJ nipa < PJ *mjipa (< *mVjip- 尹 2025:196 ) cf. PR *mi[w]a,
  • 「新しい」WOJ nipî <  PJ *mjip{o, u}i̯s- cf.PR mi[w]i, EOJ nipu

音素配列

以下、ライマンの法則の一般化。尹 (2025:196-199)。

一つの語の中に二つの*NC 子音連結は許されない。

  • 根拠:ライマンの法則
  • NN)も,NC 子音連結として数える。
  • 一般的に語頭のNC を残した形より語中のNC を残した形が好まれる
  • 「斑鳩」WOJ ikaruga~igaruga < *i̯oNkar-i̯oNkar
  • 「涙」WOJ namîta~namîda < PJ *mna- + *miː-Nta < 「目な水」*ma-na-miː-Nta
  • 「巷」ti-mata < PJ *mti-n-mata <「道-gen-股」 *miti-n-mata

活用

以下、形容詞の活用。奏再構で根幹となる日琉祖語における子音間の母音脱落の根拠となる。尹 (2025:192-194)。

上代中央語のク活用 (母音脱落)
「高い」*takas-

終止形 *takas-i > takasi
連体形 *takas-ìk-e > *takaske > *takake > takakî
連用形 *takas-ìk-u > *takasku > takaku

上代中央語のシク活用
「悲しい」*kanas-

終止形 *kanas-i > kanasi
連体形 *kanas-ik-e > *kanasike > kanasikî
連用形 *kanas-ik-u > kanasiku

  • 根拠:名詞とク活用形容詞の語根からなるシク活用形容詞語幹
  • ク活用とシク活用の区別は本来存在せず,活用語尾の部分で母音脱落が生じた形容詞がク活用,生じていない形容詞がシク活用になった
    • ura「心」+ jö-「良い(ク活用)」= uresi-「嬉しい(シク活用)」
      • e < *ai
    • tökî「時」+ na-「無い(ク活用)」= tökîⁿzi-「季節を知らない(シク活用)」
  • 語幹末子音s を認めることで終止形語尾は通説の-siではなく動詞ar-「ある」と同じ-iにできる。
  • 過去の助動詞 -si~-kî~-sikaがク活用的な -kî とシク活用的な -sika を併せ持っていることを説明しうる。尹(2024)

以下、二段動詞の活用

「起きる」*ək-ər- (>WOJ ökï-, PR *oke-)
終止形  *ək-
連用形 *ək-ər-is > *ək-əi̯s
命令形 *ək-ər-jə > *ək-əi̯jə

  • 根拠:整理?
  • 二段動詞には2種の語根がある。
    • primary stem 終止形
    • secondary stem 連用形、連体形、命令形
      • *-Vrをprimary stemに付加する。
  • 連用形語尾に*-isを再建するのは過去の助動詞 -si~-kî~-sikaが形容詞活用と類似することからである。
    • 名詞化接辞*-isであるかもしれない。

最後のは形容詞語幹名詞と動詞連用形名詞で並行することができるということなんだと思います。他にも連体形や四段や一段の活用についてもYun(2017)で触れられていますが、説明しきれないところがある感じなので省きます。

おわりに

め、めんどくせ〜〜〜〜〜〜〜〜〜(泣泣泣)

、、、まぁ、よくわからないのもありましたが、なんとなくの雰囲気は掴めたかなという感じです。まとめたつもりにも関わらずこの記事全然読めたものじゃないですが。先月の伊豆大島地名の記事は個別の項目の羅列にしていてそれなりに読みやすかったので、今回もある程度読みやすくできるかなと思っていたのですが全然そんなことなかったです。

界隈の他の人の再構もできれば理解したいんですが、なにぶん今はもうアクセスできない情報も多くて面倒なのでどうしようかな〜という気持ちもあり、どちらかというとどれかの説に偏ったとしても日琉祖語から各方言への全体像を把握したいのでKupchikの上代東国語の本の内容をもしかしたら先に記事にするかもしれないです。

でも、もっと簡単で読みやすい(かつそれなりに面白い)記事書きたいね〜という気持ちもある。

参考文献

和文

  • 尹 熙洙(2024)「日琉祖語における母音の脱落と延長」第270回 NINJAL サロン発表資料
  • 尹 熙洙(2025)「日琉祖語の子音連結」『国立国語研究所論集』29: 189-202
  • ホイットマン,ジョン (2016)「日琉祖語の音韻体系と連体形・已然形の起源」田窪 行則/ジョン・ホイットマン/平子 達也 編『琉球諸語と古代日本語: 日琉祖語の再建にむけて』21-38.東京: くろしお出版.

欧文

  • Erickson, Blaine (2004) Old Japanese and Proto-Japonic word structure. In: Alexander Vovin and Toshiki Osada (eds.) Perspectives on the origins of the Japanese language, 493–508. Kyoto: International Research Center for Japanese Studies.
  • Frellesvig, Bjarke and John Whitman (2004) The vowels of Proto-Japanese. Japanese Language and Literature 38: 281–299.
  • Kupchik, John (2011) A grammar of the Eastern Old Japanese dialects. Doctoral dissertation, University of Hawaiʻi at Mānoa.Kupchik, John (2011) A grammar of the Eastern Old Japanese dialects. Doctoral dissertation, University of Hawaiʻi at Mānoa.
  • Pellard, Thomas (2024) Ryukyuan and the reconstruction of proto-Japanese-Ryukyuan. In: Bjarke Frellesvig and Satoshi Kinsui (eds.) Handbook of historical Japanese linguistics, 39–68. Boston/Berlin: De Gruyter Mouton.
  • Tokaimori, Kanade (2020) A short introduction to the Kanade Reconstruction of Proto-Japonic (KRPJ).
  • Vovin, Alexander (2009) A descriptive and comparative grammar of Western Old Japanese: Part 2 adjectives, verbs, adverbs, conjunctions, particles, postpositions. Leiden/Boston: Brill
  • Yun, Huisu(2017) Consonant Clusters in proto-Japanese.